『ルールズ・オブ・アトラクション』

人生はおおむね凡庸だ。大抵、「予想通りに思いがけない」。そう、なにが起きたって、「ま、自分の思うようには進まないもんだ」。期待が裏切られたって、「ま、そんなもんさ。俺が甘かったな」「あーあ、こんな男に処女あげちゃった。私って損な役回り、はは」、そんなふうに冷笑的に苦難を甘受し、未来に期待しないでいられれば、傷つかないですむ。
と、思ったら大間違い。どんな小賢しい理屈で武装しようとしたって、人生には本当に思いがけないことが待ち構えている。自分はいろんな女の子と遊びで寝るし、ヤクをさばいてうまいことやっている、そこらのおぼっちゃんやおじょうちゃんとは違って、「愛」だなんて野暮な幻想抱いちゃいないぜ、なーんて振舞ってみたって、本当に好きな女ができたりするし、それがかなわなければ涙だって流す。あれ、意外だな。こんな展開、思いがけないことが起こるかもしれないなんて展開、予想していた範囲のはずなのに……。
すべての出来事の終結から映画は始まる。だから、当然、観客はラストをすでに知っている。登場人物たちの運命を。それでも、冒頭と同じ映像が流れるラストで、「こんなはずじゃなかったのに……」とうっすらと傷ついている自分に気づく。「どうしてこんなにうまくいかないんだろう」って。そう、すべての結末を見通せていたとしたって、ゲームの規則を誰よりも把握しているつもりでいたって、人生はやっぱりどうしようもなく不可解だ。じゃあ、どうすればいい?
「耐えろ」と主人公の一人は言う。悲しい? でもきっとそれが唯一の叡智だ。