『ニュータウン物語』

これも試写で観た。ニュータウンについてのドキュメンタリー……と思ったら違った。きっかけは監督が生まれた土地に戻ってみようと思ったこと。「自分、あるいは自分の両親にとってあの土地はなんだったのだろう?」という問いから始まり、そこに住み続ける人々にとってのニュータウンが語られ、そしてそこを通過する自分のような「アーティスト」にとってのニュータウンが模索される。
ニュータウンを巡る(文字通りカメラはニュータウンを巡る)、あるアーティストの彷徨の記録……なのかな? だからしばしばカメラは監督自身に向けられる。ニュータウンじゃなくてもいいんじゃないの?という疑問も当然わくだろう。そうかもしれない。でもこれは「たまたまニュータウンで生まれた」監督が、その「たまたま」を足場にして作り上げた「作品」なのだと思う。「たまたま」に身を委ねた映画、かな。
すると最後に、その「たまたま」にニュータウンがつきあってみせる。それまで迷路のようにその表情の断片だけを見せていたニュータウンが、「こんなことが起きた土地」(具体的に言うと、ニュータウンを舞台にしたインスタレーション群)というような「顔」を見せる。その「顔」を好きになれるかどうかは次の問題。でも、「顔」がなければ好きも嫌いもない。そこが町の出発なんじゃないかな。