『ニールトーキツ』(猫田家)

サンモールスタジオにて。
話を聞かない友人に振り回されるかわいそうな工場労働者(女)の痛々しい一日。
疲れて帰ってきたと思ったら、その迷惑な友人はトイレの電気を消さずに平然としている。「出たら消せって言ってるだろ!」と怒鳴りつけるが、どうやらいつものことらしく、途中から無力感に襲われてしまう。するとそれまで「いいじゃん。あんたが気づいたんだったらあんたが自分で消せば」とか反抗してたその友人は、「あれ、話おわり?」とか絡んでくる。
……う、うぜぇぇぇぇ。
その上、その友人はなにかとんでもないことをしでかしたらしい。部屋の片隅には警官の制服と、拳銃が……。
不愉快な人物を、最後の最後まで不愉快な人物として描ききるスケッチ。度胸があるなぁ。ほら、たいがい、最後に「実は愛すべき人でした」みたいな感じで終わるじゃない。
これでその友人、えーと、「新山」というキャラか、こいつが確信犯的な極悪人だったら、爽快感があっただろうな。というか、こいつが主役だった。演じていた猫田直さんは、矢口史靖監督の作品で初めて知った役者さんですが、こんな面もあるんだ、と素直にビックリした。不愉快きわまりない自己中心的な居候を、エキセントリックなだけの作り物としてではなく、説得力をもって演じていた。
気になったのは、最前列で親子連れが観てたことだ。幼稚園児ぐらいの女子だったが、かなり怯えてたぞ。思わず、「あまり大きな声で演技しないでください」と頼みたくなった。あるいは、『夏の夜の夢』の幕間劇みたく、「これは劇なので本気で怒ってるわけじゃないですよ」という注釈を入れて欲しかった。