俺の考えた、「主婦のちょっとした幸せ」

会話のない家庭の主婦。
旦那は不倫。息子はひきこもり。娘は「ばばあ」とか言う。セックスレスの5年。
最近、マクドナルドのバイトを始めた。
教育係の先輩は、娘と同じ年齢の女の子。
最初は「サンキュー」というのに慣れなかったけど、照れずに言えるようになった。
そんなある日。
自分の誕生日。
たまたま、家族が全員、家にいる。あくまでもたまたま。
はりきって餃子を焼いてみる。
昔はみんなでホットプレート囲んで食ったもんだ。
壊れてしまって何年経つだろう。
というわけで、台所で焼くことにした。
家族はみんなテレビを見てて、会話はない。
でも、その主婦は、焼きあがった餃子を皿にうつすとき、ちょっとふざけて、
「サンキュー」
と言ってみる。
「なに?」とか娘にぶっきらぼうに聞かれると、「なんでもない」と笑う。
誰にも聞こえなかった。
でも、寝る前にもう一度、小さく呟く。
「サンキュー」