『さよならみどりちゃん』@新宿トーア

原作のある映画であることは知っていたけれど、未読のまま観にいった。
西島秀俊という役者は、やっぱり「声」の人だと思ったね。哀川翔とは違った種類の金属的な声の持ち主だ。その声が、どこかコミュニケーションをぎごちなくさせる。ときとして暴力的だ。
ユタカという男は、自分勝手な性格で、そのせいで周囲の人間を苛立たせる。まあ、周囲の人間が苛立つのは、この男、くやしいけどどこか魅力的なんだよね。そういう人っている。
西島秀俊は、素でもユタカのような男なんじゃないのか?なんて妄想も抱いてしまう。それぐらい、あの甘い顔と金属的な声の組み合わせは、ユタカにぴったりだ。
なによりも、あの声が素晴らしい(っていうのは、コミュニケーションがすっごくぎごちなくなる瞬間ってことなんだけど)場面は、ユタカがゆうこ(星野真里)に「オナニーしてみせろ」と言う場面。渋るゆうこに、ユタカは「やれよ」(というような言葉)とぶっきらぼうに言う。
「あ、この人とは、わかりあえないな」、と瞬間的に感じてしまう。


で、そんなろくでもない男とようやく別れることができたゆうこに、明るい未来が待っているのかどうかはわからない。だけど、ラストシーンでびしびし伝わってくるのは、彼女がやみくもな前向きさを獲得したっていう、信じられないような幸福感だ。俺は心底感動したから、あえてこういう書き方するけど、その場面はまるで文化祭の打ち上げのような多幸感に満ちていた! そんなこと、人生に何度あるかわからないよね。