『エスケープ・フロム・LA』@バウスシアター1

これは、無駄に豪華な扱いをされているカーペンター作品だ。かつてロードショーのときには、歌舞伎町のミラノ座でかかっていた。そして今回は爆音上映だ。
隙間なく音楽がかかっているなぁ。きっとね、カーペンターって撮影中もヘッドホンでハードロックを聴いていて、助監督になんか言われるたびに、「あぁ!? いま、最高のリフ聴いてるんだよ!!」とか理不尽なこと口にして、新人の助監督は「なんなんすか」とか愚痴をこぼすんだけど、そうすっとベテランの撮影監督が「(フッと笑みを浮かべて)ああいうところがアイツのいいとこなんだよ」と謎めいた一言を残して、さっさとキャメラをセッティングする。カーペンターは演技なんて見ないんだよ。それで、自分がノリノリになると、思わず「オッケェェェェェ!!!!」とか叫んで、それでそのカットはオッケーになる。現場初心者の連中にはわからないけど、そこにマジックが生まれて、作品は確かに完璧な出来上がりを見せる。
すべての撮影が終わったとき、カート・ラッセルはニヤリと初心者に視線を向ける。
「それがいかにしてそうなったのか。それは謎だ。だが、たしかにそれはそうであった」
そんな感じで、カーペンターの映画は、やすやすと文明を崩壊させてしまう。