『ウルトラマンマックス』を観た

三池崇史が監督だ、というミーハーなきっかけだけで、こないだの土曜日の回、初めて録画した。のを、昨夜、観た。……なんて素晴らしいんだ。かつてセブンを観たときのような思いを抱いた。そして、いまもこういう番組をちゃんと作るプロデューサーもいるんだな、と不明を恥じた。


「第三番惑星の奇跡」。
怪獣の名前はイフ。
どんなやつかって? 受けた攻撃をすべて自分の能力に変えてしまう、というとんでもない怪獣だ。はじめは巨大な卵状の物体だった。爆撃を受け、自らもミサイルを発射できる形態に変化する。マックスが現れてさっさと退治しようとする。だが、マックスの攻撃もまた、そいつの能力となってしまう。
最強。
だから町はまるで地獄のようだ。空襲を受けたかつての東京のようだ。俺は見たことないけど。でもね。この、「見たことない」っていうのが大事だと思ったんだ。世代で言ったら、この番組を作っているスタッフだって日本が空襲にあっているのをリアルタイムで見ているわけがない。
だけど、一人の少女が出てきて、その少女は防災頭巾をかぶっているんだ。その格好を見て、俺はたとえば『火垂るの墓』を思い出した。それだけならね、単にそういうイメージを使いまわしている、ってだけだよ。だけど、それだけじゃないんだ。
少女が笛を吹く。
この少女。手術で視力を失っている。絵が好きだったのに。でもけなげにも、「私は、まだ聞くことができる。だから音楽をする」と言う。
そんな少女が、怪獣に向かって「音楽は嫌い? 私は絵も奪われて、音楽も奪われるの?」と泣きながら、笛を吹く。
すると、笛の調べを聞いた怪獣イフの体が変化する。少女は殺されるのか? 違う! 怪獣は、音楽を奏でる体に変化するのだ!
武器は無力であり、音楽こそが争いを終結させる! もっとも無力に見えた少女こそが最強だった。
いつか、武力がこの地上からなくなることをわれわれは願う。
というメッセージを本気で信じている。本気で伝えるためにどうする? もっとも恐ろしい出来事の一つであろう空襲のイメージを作るんだ。それを、われわれは見たことはない。だが、「見たことない」という理由で、それを作らなければ、このメッセージを伝えることは困難になる。本気で子どもを怖がらせるんだ。たとえイメージの使いまわしになろうとも、それしかできなければ、それをやるんだ。
いまどき、メッセージなんて、野暮ったいよね。なんて言うやつは、思い出して! 子どものときに、どういう思いでウルトラマンを観ていたか。
いつかこの番組を観た子どもたちが大人になったとき、「俺はあの回に影響されたよ」って言うと、俺は思ったね。