『ALWAYS 三丁目の夕日』(@吉祥寺東宝)を観て釈然としない気持ちになったのは、「これは『三丁目』で撮られていないだろう」ということ。役者たちがグリーンバックを背景に、しみったれた芝居をしているんだろうな……と想像してしまったんだよな。特にあそこ。堤真一が、店のガラス戸を壊す場面。その少し前で、子どもが「ただいまー」って帰ってくるところで、少しだけ開いたガラス戸の隙間に、体を横に向けて入ってくる。「なんであんな不自然な入り方をするんだろう?」と警戒していたら、案の定、そのガラス戸はCGで粉々に砕かれたのだった。
『狐の呉れた赤ん坊』とか『長屋紳士録』とか、昔からこういう「孤児もの」っていうのかな、あるよね。それをやるのに、こんなCGばりばりでやるっていうのがね……。


『THE有頂天ホテル』(@吉祥寺プラザ)……たまたま最近『12人の優しい日本人』をビデオで見返したんだけど、変わってないんだな。ウソのためのウソ。芝居を長引かせるためだけにウソをついているようにしか見えない。つまり、作り手の都合。役所広司演じるホテルマンが、人の話に耳を貸そうとしない無神経な人間に見えて仕方がなく、終始イライラさせられた。


ミュンヘン』(@新宿ピカデリー1)は、陰惨な映画だったなぁ。中でもお気に入りは、オランダ女を殺す場面。二発の銃弾が撃ち込まれ、確実に死が迫っている女に対して、「そこにいろ」と声をかける。その声のかけ方が、「片手間」な感じがする。「とどめを刺す準備をしているから、ちょっと待ってろ」という感じ。死につつある人間にそんなふうに冷静な態度で接する、という「無神経さ」が生々しく出ていた。
あれはきっとスピルバーグによる、楽屋オチなんだと思う。現場でいつもスピルバーグは、これから死ぬ役者に対して、「あ、血糊が吹き出る仕掛けの用意がもうすぐだからさ、トレーラーに戻らずにそのへんで待ってて」みたいなことを言ってて、助監督とかに打ち上げで「監督って、ああいうとき血糊の出方ばっかり気にしててちょっと無神経ですよ」なんて指摘されてるんだ(妄想)。
あ。そういえば、スピルバーグの映画って、死体(もしくは一瞬で死体になる人間)がたくさん出てくる映画っていう印象があるんだけど、「ゆっくりと死につつある人間」を描いたのって、他になにがあるかな? オランダ女の胸から、撃たれてから少しして(時間差をおいて)血がピュッピュッと吹き出るあたり、死がゆっくりと近づいてくる感じが出ていたなぁ。
ミスティック・リバー』のような感触の映画だった。傑作だが、俺は『宇宙戦争』のほうが好き。だって巨大な殺戮兵器が出てくるから。