『カブキなさい』

以前、S女史に薦められていた吉田まゆみの『カブキなさい』1巻を購入。
てっきり『のだめ』みたいなあほなノリだと予想していたら、全然ちがった。いまどきな感じのあほな女が、まるで興味もなかった歌舞伎にはまってしまい恋に陥る、という話かと思ったら……まあ、そのとおりなんだけど、予想と違ったのは、「恋に真剣なところ」かな。
『のだめ』に苦悩がないといったらそんなことはないけど、でも『カブキなさい』の苦悩は、なんというか「古典的」だ。だって、千夜は「でもやっぱりあなたが好き……」なんて、扇之介の前で泣いちゃったりするんだよ。自分の苦悩に、千夜は距離をとることができない。そういう苦悩の抱え方。そのさまを、作者は距離をおいてコミカルに描くのではなくて、よりそってあげてるんだよね。
あ、でもそれはきっといいことなんだと思う。そういう視点に、読者は感情移入しやすいだろうから。恋愛ものとしては、だからこれが正解なんだろうな。
あ、ちなみに『のだめ』の場合、千秋は自分の苦悩(飛行機恐怖症とか)をもてあましながらも同時に、それが人から見たらくだらなく見えるだろうということを知っている。自分の苦悩と距離がとれている。のだめは自分が苦悩していることに気づいていない……あほだから。
『のだめ』は恋愛ものじゃないか……変態クラシックマンガだ。