『阿修羅のごとく』

仲代達矢の「10年たてば笑い話だ」というセリフとか、大竹しのぶが腐れ縁と化している愛人に「どうしたいの?」と聞かれて、「わからない。でもこうしていたい」というセリフとかに、この作品の世界観が凝縮されているような気がする。いや、もしかしたら「100年たったらなにもかも忘れ去られている」というぐらい悲しい、せつない世界観かもしれないけど。でも、だからさ、そんなに重苦しくならないで、軽やかに生きていこうよ、というやさしさも感じられて、なんというか、確かに映画としちゃ長い印象があるんだけど、「この人たちと長く一緒にいたいなぁ」と思わせてくれる映画でした。夜の病院のロビーで、倒れた母親のことを話しているうちに、金魚みたいにパクパク口を開け閉めする大竹しのぶ黒木瞳深津絵里深田恭子が「なにしてんのよ」と泣きながら突っ込む場面なんて、悲しさとおかしさがごっちゃになっていて、なんだか無条件に人生を肯定したくなるのは、こういうときだよな、なんてしみじみ。あ、中村獅童がよかったことも書いておこう。キュートなんだよなぁ。不器用で、まじめで、純情なキャラを、ちょっとやりすぎかなという感じで演じるんだけど、厭味にならずに「かわいいひと」として造形していて、中村獅童という人そのものまで魅力的に感じてくる。画面に登場するたびに後ろの席の女の子が「かわいい〜」と言っていたのに、激しく同意。