今日のお仕事

エキストラで来てくれた大学生の後輩と、ちょっと話をした。とは言っても、初対面。さすがにもう、直接のつながりはない。サークルの掲示板(いまどきの大学サークルはホムペをつくっている)に、募集の告知を載せてもらったのだった。で、どういうきっかけで、映画の仕事をしたのか、というような話。
ふと思い出したのは、全然関係ない話。大学生のとき、オフィスの引越しのバイトをしていた。ある日、集合場所に早めに着いたので、読みかけだった『カラマーゾフの兄弟』をとりだして読み始めた。
そのバイトを仲介してくれていたのは、三十代の「あんちゃん」タイプの人だった。なにかと若い連中を心配して、面倒をみたがる、というような。悪い人ではなかった。
やってきたその人は、俺の読んでいる本を見て、「そういうの読んでばかりいてもしょうがないよ」と言った。他意はなかったんだろう。
でも、そのときに、「この人、しょうもない人だなぁ」と俺は思った。なんというか、善意からだろうとなんだろうと、考えもなしにそういう「忠告」めいたことを言う人のことを、俺は信用しないようにしようと思ったのだった。
そう思ったことに、たいした理由はない。たぶん、若くて無力だったからいろんなことに反感をおぼえていたのだろう。
でも、あのときの感じに、大きな間違いはなかったとは思う。