『殺人の追憶』

『吠える犬は噛まない』の監督。それだけで期待して行ったら……すげえよかった。というか、うかうかしてられない。世界には、次々才能のある監督が出現している。
ワンカットの中での人物の動きが、まず素晴らしい。が、単に「出し入れ」ということではない、う〜ん、わさわさした「動き」がすごい。躍動している、なんて陳腐な言い方だけど。踊ってるんだよな。やたらと人がつかみあったり、とび蹴りをくらわしたりするんだけど、それが単なる混乱ではなくて、観ているこちらの気分を高揚させる。
そして、顔。映画が始まるとき、「どうしてこの顔がファーストカットなんだろう?」と思わせるのだが、それがまさに狙いだということが、ラストに至って刃物をつきつけられるように判明する。真正面から撮られた顔が、こんなに力強かったのは本当に久々であるように思うけれど、最近映画あんまり観てないもんな。
ところで、これは未解決の殺人事件についての映画で、刑事たちが主人公なんだけど、俺は宮崎勤の事件をリアルタイムで見ていたときの感覚をいつか映画で再現したいと考えていて、この映画はそれにかなり近いものを俺に与えやがって、それがなんとも言えない焦燥感を抱かせるのだった。