今日、考えた話

以前書いた「サンキュー」みたいな話。


あるところに一人暮らしのお婆さんがいた。
昼間は、ビル清掃の仕事をしていた。
みのさんが好きで、「おもいッきりテレビ」を毎日予約録画をしていた。帰宅して、それを見るのが、お婆さんの唯一の楽しみだった。
ある日、お婆さんは急な心臓発作で、部屋で倒れてしまった。
119番しようにも、動けない。
結局、そのお婆さんは死んでしまった。
お婆さんの遺体のそばで、ビデオ録画がスタートする。今日も「おもいッきりテレビ」が始まったのだ。
さて、2週間後。
職場の同僚がさすがに心配して、アパートにやって来て、お婆さんの遺体は発見された。
お婆さんの遠い親戚が呼ばれて、簡単な葬式が行われた。
その後、部屋の整理をしているとき、親戚の一人が、ビデオデッキの中のテープに気づき、再生してみた。
みのさんが、心臓発作の予防について話している。
観客席のおばさんたちは、みんな大きく頷いている。「なるほど」、と。
一人だけ、首を横に振っている客がいた。
死んだあのお婆さんだった。