バンに石を投げた話

小学生のときのこと。
弟と公園で遊んでいたら、そこの池にバンがいた。
当時、ヤンバルクイナが発見されたというニュースは記憶に新しかった。バンもクイナでしょ? 子ども心に「かっこいい!」という印象があった。(このへんの心理はいまでも変わっていない気がする。分析するのがバカバカしいような心理)。
「つかまえたいなぁ」と思いながら、しかし、岸から離れた葦のしげみの中にいる。どうにも手の出しようがない。
そこで俺と弟がなにをしたかというと、石を投げ始めたのだ。なんでなんだろう? なんかそうするしかない気がしたんだよね。欲しいものがあるのに、どうしようもないとき、子どもはこういう行動をするんだよ。
当然、バンは逃げまくる。
はじめのうちは、葦のしげみから出てきたり、隠れたりしていたバンだが、そのうちまったく姿を見せなくなってしまった。
それでもしげみに石を投げつづけた。


不意に不安になった。
「まさか、殺してしまったのではないか?」
ところで当時、俺は日曜学校に通っていた。
おまけに日野日出志やらつのだじろうが大好きだった。
神と地獄はリアルだった。
石を投げるのをやめて、神様にお祈りを始めた。
「罪のないバンを殺した僕を許してください!」


と、祈りが通じたのか、バンがまたしげみから姿をあらわした。




俺と弟は、再び石を投げ始めた。




鳥好きの教授、どうぞ僕の過ちを許してください!