『TAKESHIS'』@丸の内プラゼール

うわ! 傑作じゃん。なんて言ったら先輩には「は?」って顔されたけどね。いいんだよ。自分がいいと思えれば。なんだか世間では、「わかりづらい」って意見があるみたいだけど、「どこが?」って思うよ。一つ一つのカットでなにが起きているか、わからないことないもん。誰が喋っているか、誰が誰に拳銃を向けているか、その瞬間誰がなにをしているか……わからないことなんてなにもないよ。たとえば、岸本加世子は、出てくる場面では必ずたけしをdisる。ただひたすらそれだけ。それだけのことなんだから、わかりやすい。あ、でてきた。disってる。面白い。で、そういう細かい要素が積み重なって、めぐまれない悪夢を生きるたけしのルサンチマンが噴出する。
ゾッとするのはさ、俺らからしたら「成功者」であるビートたけしが、こんなルサンチマンにあふれる「青臭い」映画を撮ってしまうこと。まるで、いいことなどなにもない50歳のしがないコンビニ店員が撮った自主映画のようだ。で、本当にそういう人が撮ったら、全然恐ろしくないと思うんだ。「憐れだな……」と思うだけで。
つまりは、そういう自主映画の、主演と監督が「あの」ビートたけしである。という事実が恐怖なんだよね。
いまや30歳で梅川昭美になることを夢見る時代じゃない。50歳で出刃包丁を握る北野武、あるいは弾の出ない拳銃を人に向ける北野武を、誰もが夢見て、うなされる。そんな時代なんだ。つまりスターはいないんだ。