『博士の愛した数式』@新宿東急

片田舎の数学者って言ったら『わらの犬』だろう。深津絵里はスーザン・ジョージのように脱ぐのか?と期待したが、「家政婦」という役にふさわしく、他人の私信を覗き見したり、仕事とプライベートをごっちゃにしていい人ぶったりしているだけだった。
あるいは、80分しか記憶が続かない『メメント』なおっさんが、猟銃をぶっぱなして、無数の死体を前に「あれ? 俺はなにをしてたんだろう?」とかいう映画なのではないか、という期待もあったが、やはり違った。記憶に障害があるというより、精神全般にわたってちょっと弱い人にしか見えなかった。
で、家に帰ってから「オーラの泉」を見てたら、あごにヒゲをはやした小太りのおっさんが、三谷幸喜をオペラの作曲家の生まれ変わりだ、とか言ってて、三谷幸喜が「どこの国の人ですか?」と尋ねると、放送事故かと思うほど無言を貫いて呆けたような表情をしたんだよね。その表情が、『博士の愛した数式』の寺尾聡の演技にそっくりで、「あれ、質問されたこと忘れたのかな?」とか思ってしまった。
結局、その答えは「イタリアとドイツを行き来した人」だったんだけど、そんな答えそのものよりもさっきの沈黙はなんだったんだよ、と憤りを感じてしまい、毎日「あなたの足のサイズはいくつですか?」とまったく同じ質問をされて、同じようにニコニコと笑いながら「24です、4の階乗です」なんて答える深津絵里は偉いなぁ……とは思わずに、「こういうふうに『いい子』を演じるのが自然な奴って、学校ではいじめられるだろうな。そうか、こいつの息子が吉岡秀隆か。中学校の先生であんな授業をしてたら、そっこう学級崩壊だ」などと憎まれ口をきいてしまう俺なのでした。