『アサルト13 要塞警察』@新宿武蔵野館

命の値段が安い映画だね。
部下を次々と殺されて、「思った以上にやるな」とか言ってる敵の顔が見えるぶん、容赦なく・躊躇なく敵を殺す主人公たちの冷血ぶりが際立つ前半。
それをどうやら見習ったらしく、敵のほうだって、主人公側の連中をどんどん「無駄死に」させる。車で脱出しようとした女二人組を殺す場面では、ようやく敵側も冷血に徹した感じだったね。「言え」「言わない」バン!みたいな感じで、「ようやく主人公たちに追いついたか」って思ったよ。


ところで、俺は近くに座ってた若い三人組を殺したいってずっと思ってたんだ。


ずいぶん昔の話なんだけど、いまはなき中野武蔵野ホールに千葉ちゃんの映画を観にいったときのこと。場内は、笑いがはじけていた。千葉ちゃんがはりきればはりきるほど、客席は失笑にも似た笑いをもらすのだった。ちょうど、世の中で「トンデモ」などという言葉が流行り始めたころだったと思う。大井武蔵野館に『恐怖奇形人間』を観にいったときにも、同じ空気が流れていた。
正直、不愉快だった。
と、映画終了後、突然最前列に座っていた男性(30代だったと思う)が立ち上がって、振り返るなり、「お前らーーーー!!!! なぜ笑ってるーーーーー!!!!」と怒鳴ったんだ。
場内には、「おいおい、空気読めよ」という白けた空気が流れた。
俺も、居心地悪かった。
だけどさ、ちょっと暗い気持ちで帰途につきながら、思ったんだ。「場内の空気よりも大事なことってあるよな」って。


昨日、俺の近くに座っていた若い三人組が、どういう連中なのかはわからないけど、はじめから『アサルト13』をバカな映画として消費しようとしているのが、あからさまだった。これみよがしに失笑したりして。
事前に、カーペンター版の『要塞警察』よりも駄目だ、とかいう情報を読んできていたのかもしれない。で、その情報に自分の身の丈を合わせていたんじゃないか?
……うがちすぎかもしれないな。
だけど、かつて中野武蔵野ホールで叫んだ、あの見るからに非モテ男性の気持ちが、俺には痛いほどわかったんだ。
頼む、俺にあいつらを処刑させてくれ。