千葉沈没?

先日、中野で友人が経営するイベントスペースで、友人たちと好きなCDを持ち寄って音楽を楽しみながらお酒を飲んでいたら、いきなり血まみれの男が店に乱入してきた。ちょうど『ギンギラギンにさりげなく』を全員で絶唱している最中だったので、テンションが異常にあがってしまった。あとから考えると人権意識に欠けていたなぁと反省しきりなんだけど……イベントのタイトルが『山賊2.0決起集会』で、コンセプトが「いかにして暴力的に他人の富を収奪すべきか、音楽を通じて研究する」っていうものだったからねぇ。
血まみれの男を見ながら、みんなでゲラゲラ笑って、「金だけは置いてけよ」「俺たちは山賊2.0だからな!」なんて叫んでいた。
そしたら、その男が叫び声をさえぎるように、「千葉が……千葉が沈みそうなんです! 助けてください!」と悲痛な声をあげるんだ。
「千葉が沈む?」
大変だ! 千葉が沈んだら、ドイツ村がなくなる。ドイツ村が沈んだら、ドイツ村の村長(どうやら地元では「村主」と言い習わしているらしい)アドルフ・ワッスラーを代表とするドイツの民族主義者たちが東京に流入してきて、自暴自棄な気持ちでテロを起こすに違いない。テロで地下鉄が破壊されたら、東京のサラリーマンは、歩いて会社に行かなくてはならない。東京のサラリーマンは実はけっこう郊外に住んでいるから、歩くのには体力がいる。
というわけで、こないだの東京マラソンは、千葉沈没の結果、東京にドイツの民族主義者たちがテロを起こすかもしれない危機感から、東京中のサラリーマンが参加して、体育の日を楽しんだ。危機感から楽しむ、というところに、東京のサラリーマンのお気楽さがわかるというものだ。
ところで、あの血まみれの男は誰だったのだろう? 危機感から、東京マラソンに出かけた俺たちは、血まみれの男のことをすっかり忘れていた。もしかしたら、死んじゃったのかも知れないな、と思いながら、でもあの必死な表情を思い浮かべたら、「ぷふぅっ!」と噴出してしまった。
でもね、後日、東京マラソンの録画ビデオを見ていたら、あの血まみれの男が、大会の関係者の一人としてテレビに出ているのを見たんだ。
男の肩書きは、「東京マラソン推進委員会書記長」。なんとなく胡散臭い感じがする。で、調べてみたら、この男、青梅空港建設について発言してるのがわかった。
「青梅空港が出来れば、そこから千葉を飛ばせるかもしれませんね」と男は「習慣プレイボウイ」のインタビューで答えている。
青梅空港建設反対派の俺としては、なにか陰謀を感じる。
血まみれだった翌日には、ニコニコとテレビに出ていたということは、あの怪我は偽装だったのか?
青梅空港建設計画と東京マラソンとのあいだにはなにか関係があるのか?
千葉が沈むというのは、デマなのか?
「千葉を飛ばせる」という発言の真意は?
新たな論争の火蓋が切って落とされたのではないだろうか?
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