『新・リアル鬼ごっこ』を読んだよ

「佐藤姓」の人だけが、王国の兵士に追いかけられる、という状況が打破されたのちの物語。
電車の先頭車両に「佐藤専用車両」ができました、という設定。根本的な解決になっていないところに、首を傾げてしまう。
ただ、昼間、電車ががらがらの時間に、先頭車両だけ乗車率300%になっている(もちろん佐藤ばかりが乗っている)という場面には、吹いてしまった。なんだかマルクス兄弟の映画のようじゃないか。しかも、そのシーンの終わりで、バランスを崩した電車が脱線して、鉄橋から落ちるのは、佐藤さんたちには申し訳ないが、「ちょwwwお前www車両移れよwww」と腹を抱えてしまった。
著者のユーモア感覚がグレードアップしたのは確かだ。
なにしろ、最終章の冒頭は次のような言葉で始まるのだ。

全国の電車が、このように佐藤専用車両を導入した結果、いくつもの事故が起きた。一時期、これはもしかしたら佐藤姓たちによる自爆テロなのではないか、と言われたが、結局のところ、専用車両という発想そのものに間違いがあったと、専門家は指摘した。

もうね、なにそれ。架空の設定を自分で作っておいて、自ら「発想そのものに間違いがあった」って。マッチポンプにもほどがある。そこまで辿り着くのに要した230ページはなんだったんだ。しかも、「専門家は指摘した」って、なんの専門家?
しかし、ある種の期待感は満足させるできであり、本屋で通常版と豪華愛憎版が並んでいて、俺が当然後者を手にとってしまったのも間違いではなかった、と思い込みたい。