間違った性知識(1)

確か小学5年生のときだったと思うけど、視聴覚室で性教育映画を見せられた。俺は72年生まれで、同世代の他の学校の取り組みはどうだったか知らないけれど、ウチの学校では男女混合だった。その上、その日が授業参観でもあった。
男子の映画と女子の映画と、ダブル・フィーチャーだった。で、映画を観終わって、俺の中では、子どもがどうやってできるかについて、観る前以上に混乱が生じていた。映画では、卵子のことを解説していた……精子のことも説明していた……そういや生理とか夢精の話もしてたなぁ……じゃあ……精子卵子はどのようにして出会うのだろう?
いくら思い返しても、映画の中でそれが描かれていた記憶はない。いや、精子卵子が結合して、というのは解説していた。で、卵子が女子のおなかの中にあることも。じゃあ、精子はどうやってそこに辿り着くのか? ……精子は……夢精するって言ってたなぁ……。
俺は結局、こう考えることにした。
大人の男女は並んで寝る。夜半過ぎ、男性は夢精をする。精液はアメーバのように移動して、女性の性器を目指す。女性の体内に潜り込み、卵子と結合する。
当時、公園に落ちていたガビガビのエロ本で、SEXという行為があることは知っていたが、それは「エロい」ことであって、決して「子作り」とは結びついていなかった。
おそらく、クラスメイトの女子は、そんな勘違いなどしていなかったんだろうけど、俺はそれからしばらくアメーバのように移動する精液を見てみたいと思っていたのだった。
そうそう。後年、南方熊楠の伝記を読んでいて、粘菌のことを知ったとき、そのイメージはまさに俺が想像していた精液そのものだったので、俺は軽い感動をおぼえたのだった。