『ジャンキー』

バロウズですよ。大学生のときに、『裸のランチ』を挫折して以来、いつも気にはなってたんだ。でもさ、村上龍だってほんとに読んだのか? いや、いいんだけど。
迂回をしながら、いつも横目でにらんではいた。山形浩生の本読んだりしてね。
で、『ジャンキー』。面白いじゃん。
中毒者の一人が、スポーツ・ジャケットを脱ぎながら走ってきて、「この上着で四カプセルくれよ」という場面が、よかったなあ。
あ、こいつらアホだ。というのが伝わってくる。
いたるところで、中毒者の姿は遠くからでもはっきりわかる、だとか、何年やめていても中毒者であることはよくわかる、だとか言っているが、中毒者は中毒者にしか興味がないんだろうなあ。
だって、奥さんのことなんて、中盤以降で突然言及されるけど、それも鬱陶しそうな感じで、興味ないんだなあ、って感じ。まあ、ゲイだからかも知れないけど。
バロウズの小説、ようやくきっちり読めたので、こんなに叙情的なところもあるのか、と驚いた部分もある。
第13章の冒頭、麻薬が切れてノスタルジックになる場面で、ふともらされる言葉。「ジャンキーはみんなこの驚くべき経験をするのだろうか」。ここの「ジャンキー」は「ひと」と置き換えてもいいよね。
人間の根源的な孤独にふと触れてしまっているみたいだ。すべてのコミュニケーションの根拠はノスタルジーなんじゃないか、なんてね。永遠に失われた絆へのノスタルジー……。