『ホーンテッド・マンション』

今日は映画の日。気楽に観られるのがいいなと思い、考えずに入りました。そういう気分にぴったりのファミリー・ムービーでした。エディ・マーフィーはここ数年、この手の映画の常連というか、いまやエディ・マーフィーが出ていることが、きっとアメリカではお父さんお母さんたちにとっての安心印になっているのだろう。「呪われた屋敷」に踏み込んでしまう一家の一夜の恐怖を描くけれど、もちろん人は死にはしない。一部幽霊が、成仏したり地獄に落ちたりするけれど。
感心したのは、これがディズニーランドのアトラクションと同じコンセプトを踏襲しているところ。ほら、ディズニーランドって、その世界観をそこなうような景観が見えないような設計になってるでしょ。同一のアトラクションの内部で、そのコンセプトを相対化するようなものは出さない、というわけだ。
この映画でも、「現代」的な都市の景観は一切出てこない。一家が乗るBMW(だったと思う)だけが「現代」的な外観をまとっている。異空間に入ってゆくんだ、という観客の心構えをそうやって視覚化し、どうじにその異空間のリアリティをそこなわないようにする。
配慮の行き届いた映画だと思いました。
ところで、そんな映画でも、俺はちょっとぞっとしてしまったのは、悪役が発するクライマックスでのセリフ。「あなたのために私は自分を犠牲(サクリファイス)にしてきたんだ」と、その悪役は自分の行為を正当化する。ああ、こういう呪いもあるんだな、と思った。自分の正義に疑いをさしはさまない論理は、裏返しに世界を呪うものとなるんだな。この「悪意」は子供向けではない気がして、少しぞっとしたのでした。