『パッチギ!』@新宿ジョイシネマ3、なぜか京都つながりで。

nishiogikucho2005-01-25

昨日、会社帰りに観た。よかったよぉ。高岡蒼佑が素晴らしい。沢尻エリカが可愛い。不良たちの顔がみんないい。68年を舞台にしているって意味じゃ、「時代劇」なんだけど、『KT』に感じたような狭苦しさ(写しちゃいけないものを苦心して排除している感じ)がなくて、のびのびしているのは、キャメラマン山本英夫の画の切り取り方もあると思うけど、役者の伸びやかな動きっぷりのおかげなんだろうな。井筒監督も変な監督だ。いや、職人として当たり前のことなのかもしれないが、出来不出来の差が激しい。前作『ゲロッパ!』の冒頭、銭湯での乱闘など、一体なにが起きているのか観ていてわからないという、アクションとしては「?」な場面だったけど、今回は面目躍如! 飛び蹴りの決め具合は『殺人の追憶』に迫る勢いだった(って比較も失礼だが)。


とにかく観ていて興奮するアクション映画で、かつ切ない青春を描いた泣ける映画なんだけど、俺がよかったのは、なにげない仕草。高岡蒼佑北朝鮮へ行くことを決意して、その壮行会を、公園でする場面。いつもは仲間の番長で、隙を見せたりしないやんちゃな男が、母親と妹を日本に置いて一人で旅立つという状況に、ふと弱気な表情を見せる。けれど、涙をこぼしはしない。が、そばにいたオモニがハンカチで息子の鼻をぬぐってやる。どんなに息子が強がろうが、母親にとっては、小さな守るべき子どもでしかない。ますます高岡蒼佑のキャラクターに惹きつけられる。素敵だ。


ところで、ここで唐突にみうらじゅん

色即ぜねれいしょん

色即ぜねれいしょん

まったくの偶然だけれど、これも京都を舞台にした青春物語。主人公が『栄光のル・マン』を観にいく場面があるから、おそらく時代は70年代初頭。高校1年生の主人公・乾純(いぬいじゅん)は、童貞を捨てるためにフリーセックスの噂を信じて、夏休みに隠岐島へ友人と連れ立って行くのだが……。甘酸っぱいんだよ。みうらじゅんって才能あるな、と思うのは、「青春ノイローゼ」なんてエッセーで言うときには、どこか「青春」を客観的に笑ってみせるけれど、この小説、主人公の一人称で語られるから、やっぱり切実。官製はがきでラブレター出して、相手の親に嫌われるとこなんて、心が痛いよ。
これ、昨日の昼間、会社で読み終えたんだけど、そのあと、『パッチギ!』を観たら、京都で68年で高岡蒼佑オダギリジョーは「フリーセックス」なんて口走ってるし、なんだか偶然って恐ろしい。
この小説のおかんも、とてつもなく優しい。
家庭教師に酒を飲まされて、酔いつぶれた主人公を介抱する母親。その場面は、こんな感じ。

僕はとっさに怒られると思い、
「別に構へんがな!」
と反抗した。
「でもおかんは「別に構へんよ、うれしかったんやろお兄さんが出来たみたいで」と、優しく笑った。それは一人っ子の僕へのプレゼントだったんだ。



オモニもおかんも、やっぱり手ごわい。
必死に背伸びをしようとするところで、『パッチギ!』の高岡蒼佑も、『色即ぜねれいしょん』の乾純も、やっぱり子どもだ。痛々しい気持ち。


そして、どちらも、文科系男子とヤンキーとの和解がある。昨日まで分かり合えないと信じ込んできた者同士が、不意に近しくなっている。「バンドしようぜ」と声をかけあう。そう、バンドのメンバーって、こんな感じで出会うんだよな。