『ブレイキング・ニュース』@新宿武蔵野館

冒頭の長まわしカット(7分!)がとてつもないのは、人物の出入りの段取りの大変さもだけど、発砲・弾着(人・車・ガラス)があるってことで、それってほとんど一発勝負に近いってことじゃん! そのうえ、道を縦構図でとらえたりもするから、あそこ一帯を完全封鎖してやったってこと? 現場スタッフには過酷なカットだったんだろうなぁ。なんてことは、一般の観客にはどうでもいいことで、でも、映画の内容そのものも、なんというか、無駄な労力が全力で投入されてる感満載だった。そもそも一人の警官が、強盗グループの一人に銃を向けられて両手を上げてしまった映像がお茶の間に流れて、警察の威信が地に落ちた。っていうのが、発端なんだけど、気づくとほとんど総力戦で犯人逮捕にかかっている。いや。なんというか。ちょっと恥かかされたから皆殺し!ってことでしょ? いや、逮捕しようとして、結果そうなったんだけど。でも、香港警察怒らせたら大変だっていうことはよくわかった。


映画の大筋からしたら枝葉のディテールだとは思うけど、不意打ちを食らったのが、後半の、篭城していた犯人がフェイクとして人質に毛布をかぶせて団地の外に出す場面。まるで、NHK教育テレビの幼児向け番組のキャラクターのような様相の化け物が、ヨチヨチと歩く。そんな感じ。足がたくさんあるゴン太君のよう。そんな作戦が、実際の逃亡の際、有効なのかどうかはどうでもいい。まるでサイレント映画のような発想で、その場にいた警官も驚いただろうけど、観客としての俺もびっくりした。絶対に関係ないとわかっていたけど、ふとメドヴェトキンの映画が思い浮かんでしまって、笑いをこらえるのに必死だった。
あの場面を目に出来ただけでも、俺はあの日、とても幸せな気持ちになれた。