「梅ちゃんの青い迷宮」@日本青年館

たとえばこんな感じ。
ウェディングドレスの下半身が透明なビニール製で、その中にドライアイスの白い煙がつまっているんだけど、梅ちゃんが動くにつれてだんだんと薄くなり、かすかにオティンティンが見え隠れする。それをなぜか親子連れが鑑賞する。そのことを梅ちゃんがネタにする。「学校でこのこと話したら駄目だよ。いじめられるから」「親の顔を見たい(と言いながら隣の席の親を凝視する)」「世の中にはこういうお仕事だってあるの。仕事だから頑張ってやってるんだからね」云々。客席爆笑。
下品な芸風なのに、終始温かな家族的な雰囲気でショーは進む。そうか、これはつまり、梅ちゃんというちょっと困った子を、親戚一同が優しくかまってあげる、そんなショーなんだ。お互いに、信頼関係がすでにある。梅ちゃんが無茶な要求(素人を舞台にあげて即席で楽隊を作ったり、サランラップ越しにキスをしたり)をしても、客は嬉々としてそれを受け入れるし、かたくなに要求を拒否してショーの進行を妨げたりしない。
梅ちゃんの発言に、「プロのお客さん」というのがあったけど、まさに梅ちゃんの舞台を観に来るお客さんの本質を言い当てている。
潜在的に、その場の全員が演者である、ということがコンセンサスとして形成されている。
じゃあ、どうやってそんなコンセンサスが生まれるのかって言ったら、ひとえに梅垣義明という人物の人柄のよさゆえなんだろうな。どんなに悪態をついたって、そのあとに添えられる「ありがとうね」という言葉に本音のすべてが込められている。
梅ちゃん、いい人。